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「平成30年度税制改正について」2018.4.23

カテゴリー:お知らせ

I. 法人税関連

1. 所得拡大促進税制の見直し拡充
・「 所得拡大促進税制」において基準年度との比較要件が撤廃され、中小企業者等は適用年度の給与等支給総額が前年度以上で平均給与等支給額が前年度比1.5%以上増加した場合、給与総額の対前年度増加額の15%を法人税から控除できることとされました。
・また、中小企業者等は平均給与等支給額が前年度比2.5%以上増加し、かつ、教育訓練費が前年度比10%以上増加又は中小企業等経営強化法の計画認定・証明がなされた場合、対前年度増加額の10%が上乗せされ合計25%の税額控除ができることとされました(但し、法人税額の20%が限度)。
・大企業は適用年度の給与等支給総額が前年度以上で平均給与等支給額が前年度比3%以上増加しかつ適用年度の国内設備投資額が減価償却費総額の90%以上の場合、給与総額の対前年度増加額の15%を法人税から控除できることとされました。また、教育訓練費が前期及び前々期平均額の20%以上増加した場合、給与等支給増加額の20%の税額控除ができることとされました(但し、法人税額の20%が限度)。
・上記見直し税制の適用年度は平成30年4月1日から平成33年3月31日の間に開始する各事業年度です。

2. 情報連携投資等促進税制の創設
・「生産性向上の実現のための臨時措置法」の制定を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の革新的データ活用計画の認定を受けたものが、5,000万円以上のソフトウエア等を新設又は増設し「情報連携利活用設備」の取得等をして事業の用に供したときは、取得価額の30%の特別償却と5%の税額控除との選択適用ができることとされました。
・上記税制は「生産性向上の実現のための臨時措置法」の施行日から平成33年3月31日までに取得等及び事業の用に供した場合に適用されます。

3. 租税特別措置に対する大企業の適用要件の見直し
・大企業が各事業年度において,平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額を超えておらずかつ国内設備投資額が減価償却費総額の10%を超えていない場合には、下記の税額控除を適用できないこととされました。
1) 試験研究を行った場合の税額控除
2) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除
3) 情報連携投資等促進税制
・但し、所得金額が前期の所得金額以下の事業年度は対象外とされました。
・この見直しは平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。

4. 事業再編・組織再編の支援措置等
・法人が特別事業再編計画の認定を受けた計画に基づく事業再編を行う場合、その有する株式を譲渡し、その認定を受けた事業者の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べできることとされました。
・上記特例は産業競争力強化法の施行日から平成33年3月31日までの間に適用されます。
・当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転することが見込まれている場合にも、当初の組織再編成の適格要件のうち従業者従事要件及び事業継続要件を満たすこととされました。

5. 少額減価償却資産の取得価額の損金算入及び交際費課税の特例の延長
・従業員1,000人以下の中小企業者等が30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合、300万円を限度として全額損金算入できる特例が2年延長されました。
・法人が支出した交際費は原則損金不算入ですが、中小法人は特例として飲食費の50%又は年800万円までの損金算入が認められており、この特例が2年延長されました。
・これらの特例は平成32年3月31日までに開始する事業年度に適用されます。

6. 大法人の電子申告の義務化
・事業年度開始時に資本金の額が1億円を超える大法人については、法人税・地方法人税 、消費税・地方消費税、法人住民税、法人事業税の確定申告書・中間申告書・修正申告書等の提出について電子申告(e-Tax)が義務付けられました。これにより大法人は電子申告をしないと無申告扱いとなり無申告加算税の対象となります。
・平成32年4月1日以後開始事業年度から適用されます。

7. 企業主導型保育施設用資産に係る割増償却
・法人が企業主導型保育施設用資産の取得等をしてその保育事業の用に供した場合には、3年間12%(建物・構築物については15%)の割増償却ができることとされました(所得税も同様)。
・平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間に取得等及び事業の用に供した場合に適用されます。

8. 法人税における収益認識等についての改正
・新収益認識会計基準への適応のため、平成33年4月1日以降開始する事業年度から返品調整引当金が廃止され(経過措置あり)、平成35年4月1日以降開始する事業年度から長期割賦販売等における延払基準が廃止される(経過措置あり)こととなりました。
・新収益認識会計基準への適応のため、 法人税上も収益の認識「金額」と「時期」の明確化が行われましたが、中小企業は新収益認識会計基準の適用対象ではありません。

II. 資産課税関連

1. 事業承継税制の特例の創設
・先代経営者が特例後継者へ特例認定承継会社の非上場株式を贈与又は相続する場合(複数人から3人までの後継者に適用可能)に特例後継者が取得した全ての株式に係る贈与税又は相続税の全額が納税猶予される 事業承継税制の特例が創設されました。この特例は平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に取得する財産に係る贈与税又は相続税に適用されます。但し、平成30年4月1日から平成35年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県へ提出する必要があります。
・現行 事業承継税制では贈与時又は相続時の雇用の8割を維持する雇用確保要件がありますが、特例 事業承継税制では雇用確保要件を満たせなくても要件を満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出すれば特例後継者の死亡の日等まで納税を猶予することとされました。但し、その理由が経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、認定経営革新等支援機関から指導・助言を受けて書類にその内容を記載しなければならないこととされました。
・特例 事業承継税制では経営環境の変化を示す下記の一定の要件を満たす場合に、特例承継期間経過後に特例認定承継会社の株式を譲渡するとき、特例認定承継会社が合併により消滅するとき、特例認定承継会社が解散をするとき等は、実際譲渡価額あるいは解散時等相続税評価額で再計算した税額と直前配当等金額を納付し、当初納税猶予額を下回る場合その差額を免除することとされました。
(経営環境の変化を示す一定の要件)
1) 直近過去3期のうち2期以上赤字の場合
2) 直近過去3期のうち2期以上前年売上より減少している場合
3) 直前期の有利子負債の額が売上高の6カ月に相当する額以上の場合
4) 類似業種平均株価がその前年1年間の平均より下落している場合
5) 経営を継続しない特段の理由がある場合


2. 小規模宅地等特例の適用要件の見直し
・持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の対象者の範囲から、相続開始前3年以内にその者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがある者と相続開始時において居住している家屋を過去に所有していたことがある者を除外することとされました。平成30年4月1日以後の相続等に適用されます。
・貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地等(但し、相続開始前3年を超えて事業的規模で行う貸付けを除く)を除外することとされました。平成30年4月1日以後の相続等に適用されます(但し、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等を除く)。
・特定居住用宅地等の範囲について、介護医療院 に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった宅地等については、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして適用することとされました。平成30年4月1日以後の相続等に適用されます。

3. 一般社団法人等に対する課税の見直し
・個人から一般社団法人等(公益社団法人等・非営利型法人等を除く)に財産の贈与等があった場合、下記要件のいずれかを満たさない場合に贈与税等が課税されることとされました。平成30年4月1日以後の贈与又は遺贈に適用されます。
(贈与税等を課税しない要件)
1) 定款等において、その役員等のうち親族関係を有する者及びこれらと特殊の関係がある者の数が3分の1以下とする旨の定めがあること
2) 当該法人に財産の贈与をした者に対し、解散した場合における財産の帰属等、財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと
3) 定款等において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないものに限る。)に帰属する旨の定めがあること
4) 当該法人につき法令違反、帳簿書類の隠蔽・仮装等公益に反する事実がないこと
・特定一般社団法人等の役員(理事に限る)が死亡した場合、特定一般社団法人等の純資産額をその死亡時における同族役員(被相続人を含む。)の数で除して計算した金額を相続財産として特定一般社団法人等に対し相続税を課税することとなりました。既に特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額は控除されます。平成30年4月1日以後の役員の相続に適用されます。但し、同日前に設立された一般社団法人等については3年間延期されます。

4. 土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設
・相続発生後も名義変更していない土地について、相続人が被相続人を名義人とするための登記に対する登録免許税が免税とされました。
・市街化区域外の一定の土地について相続による所有権の移転登記を受ける場合、10万円以下の土地は登録免許税が免税とされました。
・平成30年4月1日から平成33年3月31日まで適用されます。


5. 美術品の納税猶予制度の創設
・美術館に寄託された特定美術品(文化庁長官の認定を受けて寄託した場合)を相続等により取得し寄託を継続した場合、担保提供を条件にその特定美術品に係る相続税額の80%が納税猶予されることとなりました。

6. 相続税申告書の添付書類の改正
・相続税申告書の添付書類として提出できる書類の範囲に、戸籍謄本を複写したもの等の全ての相続人、法定相続分及び被相続人の実子又は養子の別を明らかにする書類(戸籍謄本又は法定相続情報一覧図の写し)が加えられました。従来は戸籍謄本の原本が必要でしたが、写しの提出が認められました。
・平成30年4月1日以後に提出する申告書に適用されます。

III. 個人所得課税関連

1. 給与所得控除の引下げ
・給与所得控除が一律10万円引き下げられました。
・給与所得控除の上限額が適用される給与等収入金額が850万円となり、その控除上限額も195万円に引き下げられました。
・平成32年分以後の所得税について適用されます。

2. 公的年金等控除の見直し
・公的年金等控除が一律10万円引き下げられました。
・公的年金等収入金額が1,000万円を超える場合の控除額は195万5千円が上限となりました。
・公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円を超え2,000万円以下の場合の控除額は一律10万円、2,000万円を超える場合の控除額は一律20万円引き下げられました。
・平成32年分以後の所得税(個人住民税は平成33年分以後)について適用されます。

3. 基礎控除の見直し
・所得税の基礎控除が現行38万円から一律48万円に引き上げられました。
・合計所得金額が2,400万円を超える個人は、合計所得金額に応じて控除額が逓減し、さらに合計所得金額が2,500万円を超える個人には基礎控除の適用はなくなりました。
・平成32年分以後の所得税(個人住民税は平成33年分以後)について適用されます。

4. 青色申告特別控除の改正
・青色申告特別控除額が現行の65万円から55万円に引き下げられました。但し、その年分の仕訳帳及び総勘定元帳について電子帳簿保存法に基づき電磁的記録による保存を行っていること又はその年分の所得税の確定申告書等をその提出期限までに電子申告(e-Tax)により提出した場合は65万円となりました。

IV. 消費課税関連

1. 軽減税率について
・軽減税率制度導入後、適格簡易請求書を交付する場合、書面によらず電磁的記録にて提供できることとなりました。
・平成35年10月1日以後に適用されます。

2. 国際観光旅客税の創設
・国際船舶等による本邦からの出国には、一定の場合を除き、出国1回につき1,000円の国際観光旅客税が課されることとなりました。
・平成31年1月7日以後の出国に適用されます。

3. 外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し
・輸出物品販売場制度について、免税販売手続については、輸出物品販売場を経営する事業者が外国人旅行者から旅券等の提示を受け旅券等に記載された情報に係る電磁的記録を電子情報処理組織を使用して遅滞なく国税庁長官に提供することになりました。
・平成32年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用されます。

V. その他

1. 森林環境税の創設
・森林整備の財源を賄うため、1人当たり年1千円を徴収する森林環境税が創設されました。森林環境税は国税ですが、個人住民税均等割の枠組みを活用し、市町村が賦課徴収を行います。
・平成36年度から適用されます。

2. 生産性向上の実現のための臨時措置法による固定資産税の特例の創設
・生産性向上の実現のための臨時措置法の制定を前提に、一定の固定資産が最初の3年間は固定資産税がゼロ以上2分の1以下の負担となります。こちらの特例の創設に伴い中小企業経営強化税制の固定資産税課税標準の特例措置は平成31年3月31日をもって終了となります。中小企業者等が取得した生産、販売活動の用に使用される機械装置であって市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させるものとして認定を受けた先端設備等導入計画に記載されたものが対象です。
・生産性向上の実現のための臨時措置法の施行日から平成33年3月31日の間に適用されます。